Amazonのプライバシーに関する懸念は米国でも以前から指摘されていたが (海外ではウィッシュリストのデフォルト設定は「非公開」となっており、大きい問題にはなっていない)、日本でも「ほしい物リスト」の問題で一気に批判が噴出する事となった。
Amazonには「ほしい物リスト(2008年3月8日に「ウィッシュリスト」から改名された)」という機能があるがこの機能で「ほしい物リスト」を作成すると、標準で外部に個人情報が公開される設定になっているために、世界中にユーザーの個人情報が公開されてしまうという点で騒動が起きている。
この公開されてしまう個人情報はアカウント名(ユーザー登録をする際に「氏名」と書かれている欄に入力した文字がアカウント名になる。
ショッピングサイトの特性上、本名で登録しているユーザーが多い)、メールアドレス、住所(リストに住所を登録している場合のみ)、リストに登録している商品、リストから購入した商品などである。
「ほしい物リスト」のページでは、本名かメールアドレスを入力すると「ほしい物リスト」のユーザーの検索が可能となっている。
この検索機能でメールアドレスを検索すると簡単にそのユーザーの本名が分かってしまう(本名で登録していた場合)という仕様のために、メールアドレスを公開している大手のサイトオーナーや有名ブロガーのアカウント名があちこちで書き込まれるというトラブルが発生した(なお、公開されたアカウント名が本名であるということを否定している事例もあり、確実に「発覚したアカウント名=メールアドレスの持ち主の本名」というわけではない)。
また、「ほしい物リスト」を「ブックマーク的な機能」として利用していて、外部に本名などの個人情報が公開されているということを知らないユーザーも多い。
こういったユーザーが登録している「ほしい物リスト」の商品もユーザーのアカウント名とセットで公開された状態となっているために、アダルトグッズが多数登録されている場合などはそのユーザーの社会的信用が失われる可能性もある。
Amazonの広報担当者は「公開になるという説明は必ず目につくような場所につけている。
設定の変更もできるようになっている」としているが、実際には「このリストの初期設定は公開になっています。
プライバシーの保護のため、電話番号や番地は表示されませんのでご安心ください。
」と表示されるだけで、アカウント名などが公開されるというリスクについては表示されていないという問題は存在する。
ほしい物リストを作成した記憶がなくても、商品画面の「ほしい物リストに追加する」というボタンを1度クリックしただけで、自動的に個人情報が公開される設定の「ほしい物リスト」が作成されてしまうという仕様になっている。
商品画面から「ほしい物リスト」を作成してしまった場合は、プライバシーに関する警告などは表示されない。
また「友だちにほしい物リストについて知らせる」という機能もある。
これは指定したメールアドレスに自分の名前・メールアドレス・ほしい物リストを送信するという機能であるが、システムの欠陥により悪意のあるコードの含まれたウェブサイトを訪問してしまうと、悪意のあるユーザーが指定したメールアドレスに自分の名前・メールアドレス・ほしい物リストが送信されてしまうというセキュリティホールがあることが発覚した。
Amazonにサインインしたままの状態であると、ワンクリックしただけで被害を受けてしまう。
Amazonは前述のように他サイトと比較してサインアウトの方法が分かりにくく、ブラウザを閉じてもサインインしたまま(サインインする際に「ブラウザを閉じるとサインアウトする」といったオプションは用意されていない)なので、こういったセキュリティホールの被害を受ける可能性が高いシステムである。
2008年3月12日、Amazonはユーザーからの指摘をもとにした調査を理由として「ほしい物リスト」の検索機能を停止した(閲覧などは可能)。
2008年3月21日になり検索機能が復活したが、デフォルトで外部に公開されるという設定はそのままである。
公開されるリストが存在する場合は、ほしい物リストのページに「アカウント名が公開される」といった注意が掲載されるようになったが、商品画面から新規のほしい物リストを作成した場合などは、相変わらずなんの警告も表示されない仕様である。
2008年8月8日から9日にかけて、「カゴメ野菜生活100朝のむ野菜930g*12本」を284円で販売していたため、市価に比べて著しく安い販売であることが判明し注文が殺到した。
Amazonはこの件の対応として、
注文を全てキャンセルとし、謝罪メールを送付
さらに苦情があった顧客に対してのみ300円のギフトカードを送付
また利用規約内には、価格誤表示に対しては「サイトの裁量によりキャンセルできる」と明記してある。
同様の例としては、2008年3月にAmazon.co.ukがiPaqの価格を誤って10ポンド以下(2000円程度)で表示し、このミスを利用した注文をキャンセルしたために顧客から非難を受けたという事例がある。
Amazon.co.ukは、このミスを修正するまでUKサイトの一時的な閉鎖を余儀なくされた。